2023年の活動

9月23日

【翻刻】

大正大学図書館蔵『狭衣物語』巻一

7丁裏8丁表・9丁裏10丁表


 本日は翻刻の会でした。『狭衣物語』の翻刻も数回目となり、筆者の字の書き方の癖が何となくつかめてきた印象です。しかし、前回わからなかった「悲」を字母とする「ひ」の字が今回も別の文字に見えてしまったので、しっかり復習しておきたいと思います。

 本文の内容は主に狭衣の人物像についての話でした。様々な比喩や言葉を駆使しながら主人公狭衣を褒め称えているのですが、容姿から性格に至るまで事細かに設定が描写されており、『源氏物語』が段々と人物について描写するのと対照的な書き方であると感じました。最初に全て説明されてしまうと、作品の描写から解釈を膨らませる余地がなくなってしまうため、正直に言えばあまり良い書き方ではないと感じます。このことに対しては、人物の立場など『源氏物語』に似ている部分が多いことから、初めにそれとは違う部分を描写する必要があったのではという意見もありました。『源氏物語』という長大な作品が既に世に出ている時、後の作品をいかに書いて行くかということは、当時の人々にとっての大きな課題であったのだろうと思います。『狭衣物語』のような作品があることで、『源氏物語』が当時の人々にどのように受け入れられていたのかを知ることができますし、物語の変遷も読み取っていけると思います。話の内容と共に、表現の方法についても気にしながら今後も読み進めていきたいです。


文責:髙野