【源氏物語を読む】
『新潮古典集成源氏物語』夕顔巻
p.151,l.8「紙燭もて参れり。」〜p.152,l.13「あきれたるここちしたまふ。」
夕顔が亡くなってしまった場面からの続きです。光源氏は灯りを持ってきた人を近くに呼び寄せますが、なかなか部屋に入ろうとしません。これは光源氏との身分の差を考えれば当然のことなのですが、光源氏は「所に従ひてこそ」と部屋に入らせます。この普段とは違った様子が緊迫感を表していると感じました。灯りで照らしてみると、枕上に夢に見えた女が見えた後、ふと消えてしまいます。灯りによって女は一度消えたものの、いつまた現れるかわからないため、早くこの場を立ち去るべきなのですが、光源氏は夕顔のことをなおも気にかけます。しかしながら、夕顔の体は「冷えに冷え入りて」、息は既に絶え果ててしまっていたのでした。さらに光源氏は夕顔を抱いて声をかけますが、だんだんと遺体の感触が変化していくことがわかるのみでした。
当時、死に触れることは「けがれ」とされ、遺体に触れることや遺体がある部屋の床に膝をつくことは避けられていました。「けがれ」に触れてしまうと宮中に出仕することができなくなってしまうため、本来は光源氏も退出すべきだったのですが、光源氏は厭うことなく夕顔を抱きしめていました。この場面は研究会でも注目が集まったところで、光源氏の愛情深さを感じる箇所であると思いました。また、遺体の感触などの描写から、人の死がリアルに描かれているという意見も出ました。現在に比べると、家の中で人が亡くなることは多かったと思いますが、それでも非日常であることには変わりなく、光源氏の素の様子が描かれている部分であったと感じました。
この場には法師などの頼りになる人物などもおらず、右近は主人の死に取り乱しています。光源氏は夕顔の死に動揺しながらも「南殿の鬼」の例を思い出しながら気丈に振る舞います。今後の本文で光源氏の内面がさらに明かされていくと思うので、楽しみに読んでいきたいです。
文責:髙野
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