2023年の活動

10月20日

【源氏物語を読む】
『新潮古典集成源氏物語』若紫巻
p183,l.1
「瘧病にわづらひたまひて、」~p184,l.9「日高くさしあがりぬ。」
以下、今回の範囲のあらすじです。


今日は若紫巻p.183~184の、「わらわやみ」にかかった光源氏が、徳の高い僧のもとを訪れて病気を治してもらおうとする場面までを読みました。

今回はめったに登場しない単語の話で盛り上がりました。まず、「(風邪を)こじらせる」に該当する言葉の話をしました。それは「ししこらかしつる」という言葉で『源氏物語』やそれ以外の作品においても非常に稀な言葉だそうです。また使用された例が少ない理由として古田先生が、当時の仮名文の物語の類では積極的には病気にかかった時の様子などを描写しなかったことがあるのではないか、とおっしゃっていました。

次に、現代で「治す」にあたる言葉の「まじなふ」ついても話しました。おそらく『源氏物語』には賢木巻と若紫巻しか登場しない言葉だそうです。これは呪術的な意味ではなく、現代で言う公的に定められた治療法(投薬治療)を指す可能性が高いそうです。

また、現代では医者の治療行為は基本的にはありがたいものですが、当時は加持祈祷の方が喜ばれたそうです。『落窪物語』の現代の医者に該当する男性だった典薬助が治療と称して落窪の君に近づくシーンにそれがよく表れていました。直接体に触れずに治すことができる(といわれていた)加持祈祷に対して、手を触れて診察する薬師はあまり好まれなかったということが伝わりました。

また、後半では『源氏物語』原作とそのアダプテーション作品である『あさきゆめみし』の二つの違いについて話し合いました。原作の『源氏物語』の若紫巻は比較的独立していて魔直前の巻である夕顔巻とのつながりはあまり見られませんでした。そのことから、原作冒頭部分は光源氏が理由は不明だけどなぜか体調をくずしてしまった、という印象でした。

一方、「あさきゆめみし」ではアダプテーション作品としての工夫がありました。原作では特に原因などが書かれていなかったところを「夕顔の死による精神的ダメージで光源氏が病気にかかった」という印象になるように書かれていました。

私は原作の方より『あさきゆめみし』の方の印象が強かったので、実際は夕顔がきっかけかどうか分からないということを伺い驚きました。アダプテーション作品も面白いですが、この作品に限らず、もっと原作も知っていければなと思いました。


担当:瀬川