2022年の活動

9月10日

【源氏物語を読む】
『新潮古典集成源氏物語』空蝉巻

P.109,L.2「たとしへなく口おほひて、」~P.112,L.7「すべて出でにけり。」

 

 空蝉と軒端荻の描写から始まります。空蝉は瞼が少し腫れ、鼻筋も通っているほうではないため、老けた感じであると美しくない部分が描かれています。しかし、たしなみがあるため、誰もが目を引き付けられる様子をしています。軒端荻はきれいな容姿ですが、陽気にくつろいでいるため、空蝉とは違った魅力を持っている方です。この場面では「かいま見」が重要な役割を果たしています。「かいま見」とは、覗き見の意味を表します。当時は男女が顔を合わせることはないため、「かいま見」によって恋愛に発展することがあります。光源氏が「かいま見」の醍醐味を味わいつつ、二人の女性を対比しているのが印象的でした。光源氏は二人の女性がくつろいでいる様子を見られたので、嬉しい気持ちだと原文から読み取ることができ、どちらに強く惹かれるのかを読者が考察できるのは魅力的だと思いました。また、くつろいでいる様子を覗き見された女性たちはかわいそうに感じました。

 光源氏は小君に部屋の中に入れてくれるよう頼みました。以前も光源氏が小君を頼っていましたが、今回は小君に対する信頼度が高まったように思えました。小君も光源氏に頼られて嬉しい気持ちであると同時に、プレッシャーにもなってきているのではないかと考えます。女房たちが寝静まったため、光源氏を部屋に入れます。本文から部屋に人が多くいることが分かるので、読んでいてドキドキハラハラする場面でした。「やをら」(意味:そっと)という言葉が近くに二つ使われていることから、緊張感のある状況だと分かりました。また、光源氏が来たことを感じ取った空蝉は一重着物だけを着てそっと抜け出します。肌着のような恰好で出ていったので空蝉が急いでいることが読み取れます。着ているものでどのような状況下であり、登場人物の気持ちを考察する面白さをこの場面でより一層感じました。

 

文責:森迫