【源氏物語を読む】
『新潮古典集成源氏物語』02帚木巻
P91.L10「鶏も鳴きぬ。」~P94.L11「世のたとひにてむつびはべらず」と申す。」
(感想)
お供の人々はぐっすり眠れた様子であり、守も出で来て「女房達の中には御方違えならともかく、暗いうちにお帰りにも及ばないでしょう」という者もいました。その頃、光源氏は空蝉に会える機会がなく、手紙のやり取りもできないことに辛い気持ちになっています。どうやって手紙を差し上げたらいいのか悩み、光源氏は泣いていますが、その姿も美しいのです。空蝉は光源氏が今まで出会った女性とは違うタイプであるため、簡単になびいてくれないからこそ、より魅力を感じていると考えることができます。光源氏が邸に帰っても眠れなかった様子から思い悩んでいることが伝わってきて、空蝉のことが気になって仕方ないのでしょう。そして、色々思い悩んだ挙句に、光源氏は紀伊守を呼びました。この二人の会話は知らない登場人物たちと知っている登場人物とでは読み取り方に違いがあり、非常に面白くなっているという意見が出ました。光源氏がドキドキしているという点を読者しか知らないというのは見どころの一つと言えます。
今回読んだ中で、内容は馬の頭の議論の伏線回収が出てきました。本文では「~隈なく見集めたる人の言ひしことは、げに、とおぼしあわせられけり。」とあり、P56.L7では「隈なき」と出てきました。ここでの助動詞「けり」は「気づかされる意」が込められています。光源氏が「なるほど」と気づいた点に関しては良いことであるのかは疑問ですが、悪知恵を知ってしまったのであれば、気づかない方が良かったのかもしれないと思いました。また、「女などの御方違えこそ。」という本文に関して、「女などの」を括弧の外に入れるのか、入れないのかという話題がありました。日本古典文学全集では「女などの」を括弧の外に出していました。これは写本の違いですが、写本の本文を見比べることの大切さを感じ、『源氏物語』をはじめ、色々な作品で本文の違いに注目して読んでいけたらなと思います。
文責:森迫
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